テリー・ギリアム、7年ぶりの新作です。その7年の間に「ラ・マンチャの男」を撮り損ねたメイキングフィルム「ロスト・イン・ラ・マンチャ」もありますが、映画というと、あの「ラスベガスをやっつけろ」以来なんですね。あの「ラスベガスをやっつけろ」は、ホメてる人を見つけるのがとても困難な映画です。たぶん世界全体を見渡して、そこにギリアム本人を入れても、あの「ラスベガスをやっつけろ」をホメる人は21人ぐらいしかいないかも。まぁ、21人いればいいとも言えますが。
しかし、「細木ババアに10日後に死ぬと言われたら観ておきたい最後の10本」とかいう企画があったら、ぜひそこにギリアムの「フィッシャー・キング」を入れたいと思ってるワタシですので、嫁さんと子供は外出、晩メシはひとりで外で食ってこい、と言われた土曜の夜には、行きます、シネコンに、フラフラと。
たぶん寝るだろうな、と思ってたんですが、なぜか混んでて、隣の席に妙齢のご婦人が。そのご婦人が気になって眠れなかったというか、いや映画もなかなかだったというか、ギリアム、マジメに撮ってるな、テクだけ期待されてるんならテクだけ見せてやろうじゃねえの、という気構えが見えるというか、こんなご婦人にわざわざ観に来てもらえるなんて、テリー、おまえってエライよ、と言うか、とにかくご立派でした。
で、妙齢のご婦人に後ろ髪引かれつつ帰路についたのが11時過ぎ。その後、薄ら寒い3人ぐらいしか乗っていない地下鉄に寒々と揺られながらも、まだ妙齢のご婦人の幻影にうなされつつ、やっぱり映画ってのは映画館で観るものだな、と思った夜でした。
2005年11月09日
ブラザーズ・グリム
投稿者 いがらしみきお
2005年09月20日
チャーリーとチョコレート工場
「チャリチョコ」です。家族といっしょに観に行く約束が、先にひとりで観てしまったのですごく怒られました。うぐぐぐ。ほんとは「銀河ヒッチハイクガイド」を観たかったんですが、仙台ではやらないようなので今週は他に観たいものがない。地方のシネコンじゃ今や「銀河ヒッチ−」なんかどこもやりませんしね。だいたいにおいてSFとかホラーなんてものにはおばさんは来ない。おばさんが来ないものはやらない、というのが最近の日本のショー・ビズの現状です。
昔の経済原則はなにをさておいても「若い人」でした。若い人が来ないものには誰も来ないし、若い人が飛びつかないものはブームにもならないものと決まってましたが、今やほとんどのイニシャチブはおばさんが握ってるような気がします。では若い人はどうしてるかというと、ジリジリとオタク化してしまっている。昨日なんか、ウチの嫁さんも娘も、なんのためらいもなく自分を「オタクだよ」と言ってしまうので、ちょっとびっくりしました。「オタク」っていつのまにか悪口じゃなくなってます。
ティム・バートン監督と言えば、オタク文化のアイドルみたいな人ですが、「オタク」が悪口じゃなくなるのと同じようにが、この人の作品もどんどん普遍化してきてます。ただ、それは評論家の言うところの「ティム・バートン特有の毒がなくなった」とかいうことが理由じゃないでしょう。毒なんて抜くのも入れるのもそんなに難しいことじゃないんで。たぶんティム・バートンはやっぱりオタクだからでしょう。オタクの経験値って有限なんですよ。
「チャリチョコ」もテーマパーク巡りみたいな映画ですが、スモールワールドですね、これ。たぶんティム・バートンはスモールワールドが一番好きなんでしょう。でも、スモールワールドが一番好きっていうオヤジに言うべきことはなにもないじゃないですか。「ああ、そうですか。いいですよね、スモールワールドも」としか言えない。そんな映画です。
投稿者 いがらしみきお